政治家が死後に選択を求められた話

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体、心、魂は人間を形成する三本柱です(感覚器官も加わりますが)。この三本柱のことを「トリ・スタンバ Tri Stambha」といいます。

アーユルヴェーダは体だけの健康をめざすのではなく、体、心、魂のすべてのレベルでバランスがとれた状態で健康になることをめざしています。というか、体、心、魂がすべてバランスがとれてはじめて健康といえるのです。体も健康で、心がサトヴィックでおだやかな状態であり、魂も充足した状態が、アーユルヴェーダがめざす健康なのです。

ときどき思います。この健康の定義はよく理解できます。そうなりたいと思います。しかし、体、心、魂のすべてのレベルでバランスがとれた状態では芸術は生まれるのだろうかと。優れた芸術の多くは、苦悩する心や、荒ぶる心や、バランスの欠いた心から生まれているのではないかとも思ったりします。すべての人のトリ・スタンバが仏様のように理想的な状態になったら、画期的な新しい発明は生まれないのではないかと。

こういう話があります。

ある腐敗した政治家が亡くなりました。閻魔様の部下が現れ「天国に行きたいか、地獄に行きたいか、行きたいほうに連れていってやる」と問いました。政治家は天国と地獄の様子を見たいと言いました。閻魔様の部下は政治家を天国の部屋に連れていきました。政治家が窓から天国の部屋を覗くと、全員が面白そうなことを何もせず、退屈そうにみえました。政治家は「天国は刺激がなく、つまらなそうだ」と思いました。

閻魔様の部下は次に政治家を地獄の部屋に連れていきました。窓から中を覗くと、飲めや歌えやの大騒ぎ。踊ったり男女が戯れたり、そこは刺激にあふれた享楽の世界でした。政治家は迷わす地獄を選びました。閻魔様の部下は「取り消しはできないけれどそれでいいのか」と尋ねました。政治家は「もちろんです。地獄は楽しそうです。天国はつまらないですよ」と答えました。閻魔様の部下は政治家を地獄の部屋の中に連れていきました。そこは火あぶり、水責め、拷問の世界でした。その恐ろしい光景をみた政治家はうろたえながら閻魔様の部下に尋ねました。「窓からみた様子と違うではないか」と。閻魔様の部下は答えました。「ああ、あれは宣伝広告だよ」と。

体と心と魂がすべて充足した状態は刺激に欠けると考えるのは、まだまだ理解が不足しているようです。

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